みずうみ2023

暮らしの中で出会った言葉や考えの記録

性暴力についての覚書き①(社会構造が支える性暴力、若年者への性虐待の特徴)

物議を醸している一連のデヴィ夫人の発言。

一読してまともに言及する価値もないとは思う。ただ、彼女の意見があまりにも定型的な無知と偏見を露呈していること、構造的な差別意識を助長するロジックなので、この言説への反論はそのまま、「性なる家族」の復習まとめになると思った。

ゆえに引き合いに出して活用させてもらう。

 

「性なる家族」の終章で、総括的に語られているこの言葉たちが心に残っている。

『性暴力は、必ず弱い立場の人たちが責任を負わされる構造になっている。強者が正義でいるためのあらゆる自己正当化がなされる。』

『誰かの犠牲の上に成り立つ「当たり前」を壊すことによって、新しい未来が開ける。』

私たちは、強者が自覚も痛みもなく踏みつけているその足を、まず退けよと言わなくてはならない。

 

ジャニー氏が亡くなってから、我も我もと被害を訴える人が出てきた。死人に鞭打ちではないか。本当に嫌な思いをしたのなら、その時なぜすぐに訴えない。代わってジュリー氏が謝罪も済ませているのに、これ以上何を望むのか。

 

東山紀之氏は被害を訴えた元jr.たちの発言を「勇気ある告白」と表現し、「ジャニーズ」という名前の廃止についても言及した。その才能を見出し、育て、スターにしてくれたジャニー氏に対して、恩を仇で返すとはこのことではないか。

 

既に日本中が知っている事をわざわざ世界に知らしめる必要があろうか。これが、旧ユーゴスラヴィアセルビアウクライナに侵攻したロシア兵による、非情な強姦致死であるとか、ミャンマーロヒンギャチベットウイグルの女性が国軍に凌辱・強姦、乱暴された、というのなら分かる。

 

私はジャニー氏をよく知っている。事務所の子を我が子のように愛しく大切に可愛がり、ワゴンに沢山のお弁当を載せて自ら各楽屋に配っていた。ジャン・コクトージャン・マレーを愛したように、そのような特別な世界、関係性というものはある。ジャニー氏は半世紀に渡って日本の芸能界を牽引し、スターを育て、その非凡な才覚で何億何千万という人々を楽しませ、夢中にさせてきた。昨今の流れは偉大なジャニー氏の慰霊に対する冒涜、日本の恥である。

 

ジャニー喜多川氏の性加害問題が巷で取り沙汰されてもう長い。被害を訴える7人が「ジャニーズ性加害問題当事者の会」を結成し、国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会はこの7・8月での訪日を発表。聞き取り調査を行うそうだ。日本の、一芸能事務所の問題を国際機関が調査に来るというこの事態、全く腑に落ちない。

(以上、2023/7/18 デヴィ・スカルノ氏のツイッターより引用)

 

死人に鞭打ちではないか。

【性暴力は、社会構造に支えられている】

ていうか、夫人、性暴力被害者に鞭打ってますよとは普通に思うが・・・。

世界のあらゆる国家や家族が、成人男性が女性や子供を支配し所有することで成立してきたという歴史的現実がある。

そのため、社会全体が性加害者を意識的、無意識的に守ろうとする。

彼女のように加害者から直接恩恵を受けた関係性はもちろん、そうでなくても、非当事者が力の強い権力側、男性側に与し、弱く責めやすい立場の者に疑念、批判、攻撃を向ける作用は、性暴力の周辺では特に強くはたらく。

 

性暴力にまつわる既成の言葉の多くは、男性の願望や免罪を含む言葉になっている。

近親「相」姦(あたかも同意の上かのような)、「痴」漢(普通ではない特殊で愚かな男のやることだと切り分けるような)、「いたずら」(悪気のない一時の気の迷いかのような)、「乱暴」(性加害かどうかをあえて分からなくする)。

また、メディア報道において、性加害者の実名はほとんど明らかにされない。

 

性暴力被害者は三重に否認される。

まず、加害者に「これは暴力ではない。愛情や好意やかわいがりの延長だ」と加害を否定される。

(主に近親姦の場合)母親には「嘘をつくな」「お前が悪い」と否認されたり、聞こえないふりをされたり「けがれた」と責められるケースが多い。母親にとってあまりに受け入れがたいことであるうえ、封建的なジェンダー観を持つ親の差別意識によって被害者は更に苦しめられる。

そして、医療機関や公的機関の専門家には、長い時差とPTSDによる曖昧な記憶のために捏造や誤記憶を疑われる。

司法に訴えても、性犯罪被害者はどこまでいっても「本当に事実かどうか」を繰り返しシビアに問われ続ける。

寄ってたかって被害を存在しないことにされる理不尽な苦しみに長期間耐え、被害を被害と認めさせるために多大な労力を払わねばならないのが、性暴力被害者の現実。

 

本当に嫌な思いをしたのなら、その時なぜすぐに訴えない。

【若年者への性虐待の特徴】

性行為というものをまだよく理解しない時期に加害された人は、大人になってやっと自分がなにをされたかを理解する。

特に幼い子供の性被害者は、性加害を愛情とは思えない自分を責め、混乱し、認知を無理に歪め、記憶を否認しながら生きることになる。

 

多くのケースでPTSD症状などを乗り越えて加害者を告訴できるまでには20年以上かかる。

今年、刑法改正があったが、不同意性交罪の時効は15年、不同意わいせつ罪は12年なので、手遅れになる可能性は大きく、現行法では大多数の加害者は時効で何の罪にも問われない。

のみならず、日本では、2017年以前は社会の無知と偏見のために、男性の性被害者が被害者として認定されることさえなかった。