みずうみ2023

暮らしの中で出会った言葉や考えの記録

「〈性〉なる家族」

Amazon.co.jp: 〈性〉なる家族 eBook : 信田さよ子: 本

2019年春秋社/信田さよ子

 

この本には、私が長年知りたかった幾つもの疑問の答えが、ストレートに分かりやすく書かれている。

それは、主にジェンダーや性犯罪にまつわる疑問。

重苦しい、読むのが辛い内容が多く含まれるも、長年の胸のつかえが取れるような、目が開かれるような感じを持ちつつ読んだ。

 

・どうして性犯罪は被害者にとってここまで過酷なのか?

・なぜ、近親姦が起きるのか?

・男性の「性欲」とは抑えきれないほど強い本能なのか?

・性犯罪を犯す者はどういう世界観、自己正当化のロジックを持っているのか?

・どうして女性が性に対する自己決定権を持つ(出産や中絶を女性の自由意志で行う)ことに、国の政治は極端に冷淡なのか?

PTSDとはどういうもので、どのようにして乗り越えていけばいいのか?

・DVや性被害を自覚したら、どのように訴え、どう乗り越えていけばいいのか?

・どうして学校や公的機関は虐待やいじめの問題をなかったことにして隠蔽しようとするのか?

・加害者が責任を取るとは、具体的にはどういうことか?「反省」とは何か?

・どうして多くの男性やネトウヨ的な人々はフェミニズムに攻撃性を向けたり、後ろ向きな態度を示すのか?

これらがこの本1冊を読む中で相当分かった。すごい本だと思う。

そして、この他にもいくつもの重要な論点があって、「家族のありようと国家のありようは相似形である」という視点は性犯罪、戦争犯罪の構造を考える意味で本当に重要な思想だと思った。

日本の臨床心理の現場に信田さよ子という人がいることの値打ちを思う。

 

 

私が性暴力に強い関心を持つようになったのは、多くの人同様、2017年にハリウッドで巻き起こった#Me  Tooムーブメントだったと思う。

それ以には無関心だったということではなく、タブー化し意識的に蓋をしてきた、深く考えることを避けてきた領域だった。

#Me  Too以降は、性暴力に関する報道の量もぐっと増えたので、事あるごとに結構継続的に考えてきたと思う。

それでも、特に近親間や戦争時の性犯罪はタブーや隠蔽の圧があまりに強くて、自分自身も読み込むのが気鬱で怖くて、なかなかここまでストレートに踏み込んだ言論のものには触れる機会がなかった。

性暴力サバイバーの知人の勧めでようやく読めた。

折しも今世の中を騒がせている故・ジャニー喜多川の性犯罪と、それに対する社会や人々の反応について、幾つものもやもやした考えをずっと感じ続けているタイミングということもある。

 

覚書きは別記事にて。