本当に嫌な思いをしたのなら、その時なぜすぐに訴えない。
【支配とは何か】
性暴力被害者に「どうして抵抗や反論をしなかったのか?」「どうしてもっと早く逃げなかったのか?」と問う人がいる。
実際、刑法でも性暴力の立証条件に「抗拒不能」(加害者の暴行脅迫、被害者の心神喪失のいずれかを証明する必要)があったため、大多数の近親姦を含む性犯罪が無罪になってきた。
このような意識で性犯罪を語る社会は、性犯罪が起こる現実の状況に対する基礎知識が大幅に不足している。
今年の刑法改正の改正によって、次の行為が新たな有罪条件になった。
1. 暴行、脅迫
2. 精神的・身体的障害を生じさせる
3. アルコールや薬物を摂取させる
4. 眠っているなど意識のはっきりしない状態での行為
5. 突然襲うなどして抵抗するいとまを与えない
6. 恐怖や驚愕などで被害者が身体硬直、フリーズした状態
7. 長期的虐待などによって被害者が心理的に支配された状態
8. 経済的(雇用関係など)、社会的(教師と生徒など)の地位の影響で受ける不利益を被害者が憂慮している状態
いうまでもなくジャニー喜多川氏の犯罪は、8に当てはまる。拒めばデビューできなかったのだから。
夫人は「今になって我も我もと訴えて」と書いているが、この国では、2017年にようやく男性の性被害者の存在が公式に認定され、今年2023年にようやく法的に経済的に支配状況にある者からの加害が処罰条件に明記された。
(加えて今回の改正で、性交同意年齢も13歳から16歳に引き上げられている。
ジャニー氏の場合は、13歳どころか10歳以下への加害も複数訴えられているので元々論外だけれど。)
被害者にとっては今やっと、加害を訴えることができる状況が整ったと言えると思う。
支配とは、抵抗や反論、拒否を奪うこと。
支配は、抵抗の弾圧や抑圧だけではない。
だから、一見同意したかのような行動をとったり、無抵抗だったり、時には喜んで従っているように見えても、相手が心から同意していると判断するのは間違っている。
支配している側には相手の抵抗や反論、拒否を奪っているという意識がない。