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原作も未読で、前知識なしで観賞。
1980年代のすごくヒューマンなハリウッドSF大作を堪能したという心持ちで、劇場を後にした。
まるで「E.T.」と「バック・トゥ・ザ・フューチャー」と「インディ・ジョーンズ」を足して3で割ったみたいだ。
ディストピアSFにはもういい加減辟易しているし、コメディとしても面白い作品だった。
いささか直球すぎる表現に、気恥ずかしさも覚えつつ。
それにしても今、こういう素直で直球なメッセージをもつ作品が、人々から諸手を挙げて歓迎されているということは、アメリカの人たち、ひいては世界中の多くの人たちが、この人間社会の世知辛さや下劣さにいかに深く傷ついているかのあらわれなんだと思う。
もちろんそれは今に始まったことではなく、2023年に「Everything Everywhere All At Once」を見た時もすごくそう思ったけれど、3年前に比べても、アメリカと世界を取り巻く状況は、目も当てられないほど悪化の一途を辿っている。
人間が本来、こんなに醜いものではあるはずはない。
今こそ愛と信頼と友情を取り戻したいんだ。
人々がそう願うのは、至極当然のことだ。
いつからだろう、こんなにも「自分さえ良ければいい」がまかり通るようになったのは?
少なくとも、1980年代のハリウッド映画にはそういう思想はまだなかったんだな、とこの作品を見て思う。
「自分さえ良ければいい」という考え方は、本当はめちゃくちゃ格好悪いことなのに、大金持ちや権力を持っている人々が、堂々と毎日のように「自分さえ良ければいい」というメッセージを世界に向けて発信し続けている。
それを見聞きさせられることは、人として善く生きたいと願う一人ひとりにとっては、まるでDVみたいなものだ。
この作品は、グレースという「古き良きアメリカンヒーロー」の姿を通して、人としてかっこいいとはどういうことかということを、なんとか取り戻そうとしている映画のように私には感じられた。
仰々しい使命感とかなくて、ちょっと意気地がなかったりして。
でも限定された状況を、けして自暴自棄になることなく、持てるものを全て駆使して、工夫の力でたくましく乗り越えていく。
いつもどこか楽観的で、肩の力が抜けたとぼけたユーモアがあって、チャーミングでセクシーで。
オープンマインドで友情と信頼を大事にする。
そして、命に変えてもdignityを守り抜く。
あの頃子供だった私は、そんな「アメリカンヒーロー」に憧れてやまなかった。
しかしそんな本作も、グレースを強制的に宇宙船に閉じ込めて送り出したその他の地球の人々のありようは、チャーミングでもフレンドリーでもない、「仕方がない」を言い訳にした効率主義で非人間的な人々なのが、いかにも今の時代のリアリティだ。
そんな世界にあっても、我々はなんとしても「人間味」というものを死守するんだ。
2026年は、みんなで寄ってたかって、切実にそのことを表現する1年になるんじゃないかと思う。