うっかり見だした「地面師たち」、毎晩夜更かしして一気見してしまった。
グロくてやだなーって思う部分もあったけど、バイオレンス・クライムもののわりに嫌な気分にそれほどならずに見られたのは、大根監督らしい王道エンタメさゆえかなと思う。
あー疲れたでも面白かったなーと思って寝て一晩明けて、出し抜けに非常に虚しい気持ちに襲われた。
なんなんじゃろう、この気持ち。
似通った世界観とテーマを持つ作品に川上未映子の「黄色い家」があるけれど、この作品は素晴らしい作品だったなと今もしみじみ思い返す。
「地面師たち」と読後感が全く違う。
思うに、どんな作品も趣向を凝らして次々見たく(読みたく)なるような「引きの強さ」を作品に織り込むものだが、何をフックにするのか。
それは作品の品性と大きく関わっていると思う。
スリリングな綱渡り感、背徳的で刺激的なエロ、暴力、血しぶき、謎解き。
そういうものに、人間はおおむね必ず反応してしまうように出来ている。
色々見てきてある程度作り手目線を持っているような人でも、ついぐっと引き寄せられる。
劣情とは、それくらいに強い、ホルモン的なものである。
夢中で見たのは作品が魅力的、感動的だったからだと思いがちだが、実は「強すぎる引き」によって、脊髄反射的な生理反応を手玉に取られたということも往々にしてあると思う。
虚しくなったのは、きっとどこかに操られたことを感じていたからのような気がする。
夢中で時間を潰すものを見ることもいいと思うけれど、私は時間があればもっと違ったものが見たいと思うから、こういうあざとい作品にはあんまり近づかないように気をつけよう、と思った。
それにしても、こういう殺伐とした作品が本当に多いなと思う。
「軍資金もコネもツテもないただの人が正攻法で社会に立ち向かっても使われるだけで成功は望めない。真面目に生きてても成功には無縁だ。
裏の仕組みに長けていて、理論武装し、悪賢さで他者を出し抜く者だけが大きく得をするのだ」
そんなリアリティーが多くの人にあるからだろうか。
夢と希望が枯渇しているなあ。