みずうみ2023

暮らしの中でふと心が動いたことについて書いています

「関心領域」

 

2023年アメリカ・イギリス・ポーランド合作/原題:The Zone of Interest/監督:ジョナサン・グレイザー/105分/2024年5月24日〜日本公開

 

昨日アップした文章が、救いもない暗いものになってしまったのは、きっとこの映画を見たせい。

この作品は、これまでに見たあらゆる映画の中で、最も気持ちが落ち込んだもののひとつになった。

今も耳の奥に、聞こえるか聞こえないかくらいのごく小さな、銃声や悲鳴や地響きのような機械音が耳鳴りのように響く。

いつまでこの落ち込みを引きずるだろうと思うと、うんざりする。

いや、憂鬱の欠片は、心の中にしこりのように、この先もずっと残り続けるのかもしれない。

 

そんなことを書くと、どれだけ凄まじい作品かと思うかもしれないけれど、目に見える残酷なシーンややりとりはむしろ注意深く避けられ、全てが仄めかすように描かれる。

誰かがあからさまに断罪されることもない。

ほとんどが広角の淡々とした撮影に終始する。

ここにあるのは、ただの日常だ。

ここにいるのは、ただの人間だ。

彼らの感情や行動原理は、とてもありふれたものだ。

退屈で、平凡な、普通の人々。

 

誰もが私だと感じる。

あの母親も、父親も、子供たちも、祖母も、使用人も、ナチ党の組織の人々も。

映し出されるあらゆる人々の内に、自分がいると感じる。

自分だらけだ。

 

枠組みの外側では感覚や想像力を遮断すること。

「ということにする」という線引きを勝手に作り上げること。

そのようにして、私は私たちは、保身する。

人間とは、そういう生き物である。

その事実を肝に命じて生きていくということくらいしか、できることはないように思える。

 

 

私が一番怖ろしく思うのは、この映画を見て、大して何も感じない人かもしれない。